
廃棄コストや在庫ロスに悩む日用品卸の方へ。今、サステナブルな在庫管理が企業評価と直結しています。
目次を見て必要なところから読んでみてください。
廃棄在庫の増加が日用品業界に与える影響とは?
日用品の卸業を営む中で、売れ残りや返品による在庫の山に悩まれている方も多いのではないでしょうか。
「まだ使える商品なのに」「捨てるにはもったいない」――そんな葛藤を抱えながら、最終的には廃棄を選ばざるを得ない現実もあります。
今、サステナブルな視点が求められる社会において、廃棄在庫の扱い方が企業の評価にも影響するようになってきました。
ここでは、日用品卸の現場で起きている“廃棄問題”の実情と、その背景にある課題について、いっしょに見ていきたいと思います。
売れ残りによる廃棄コストと経営リスク
季節商品やキャンペーン商材、賞味期限が近い消耗品など――。
売り切れる前提で出荷した商品が想定より売れずに戻ってきた時、それは“在庫”ではなく“コスト”としての顔を見せ始めます。
✅ 廃棄にかかる主なコスト
項目 | 内容 |
---|---|
廃棄処理費用 | 回収・分別・焼却などの実費負担 |
保管コスト | 倉庫保管による固定費圧迫 |
機会損失 | 本来売れるはずだった棚・在庫スペースの損失 |
このように、廃棄には「ただ捨てるだけ」では済まされない経営的な重みがついてきます。
とくに中小規模の卸業者さんにとっては、この負担が毎月のキャッシュフローを圧迫し、持続的な経営を困難にする要因になりかねません。
「廃棄を減らす工夫ができれば、もっと利益が出るのに…」
そんな風に思ったことがある方も、きっと多いはずです。
返品・棚落ち在庫の行き場がない現実
大手小売チェーンとの取引においては、返品や棚落ち(=販売終了)のタイミングで、多くの商品が一斉に戻ってくるケースも少なくありません。
その量は予測しづらく、対応も後手に回りがち。
倉庫のスペースを急きょ空けたり、処分先を探したりと、現場はいつもバタバタしてしまいます。
そしてもう一つの悩みが、「安く売ることへの抵抗感」。
どこに出してもいいわけではない。価格を下げることで、既存の取引先やブランドイメージに影響が出ることを恐れて、行き場がなくなる商品も多いのです。
「本当はまだ使える商品。誰かに届けたい」
そんなやさしい気持ちを持っている方こそ、サステナブルな選択肢を探しておられるのではないでしょうか。
次のセクションでは、企業として評価される「在庫の活かし方」について考えていきます。
企業評価が変わる「サステナブルな在庫管理」とは

廃棄を前提とした在庫管理は、もはや“当たり前”ではなくなりつつあります。
今、多くの企業が問われているのは「この商品、どう届ける?」ではなく、「この商品、どう活かす?」という姿勢です。
日用品業界でも、在庫の扱い方ひとつで社会からの評価や信頼感が大きく変わる時代になってきました。
ESG・SDGs対応が求められる時代背景
環境への配慮、社会との共生、健全な企業経営。
この3つの視点を重視する「ESG経営」や、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」は、もはや大企業だけのテーマではありません。
✅ ESGとSDGsで重なる在庫管理のポイント
- Environment(環境):焼却・埋立によるCO₂排出を減らす
- Social(社会):必要とする人に届ける“モノの循環”をつくる
- Governance(統治):ムダのない在庫運用で経営健全化を図る
これらをきちんと意識した上で「私たちはこう考えて行動しています」と姿勢を示すことが、企業に対する評価につながるようになりました。
しかも、これは取引先やステークホルダーだけの視点ではありません。
SNSやクチコミなどを通じて、一般の消費者の目もますます厳しく、そして温かくなってきています。
「ちゃんと考えている会社だな」
そんな一言が、これからの企業価値を大きく左右する時代です。
「捨てずに活かす」企業姿勢がブランドイメージを左右する
もし、まだ使える商品が廃棄されていたと知ったら、どんな気持ちになりますか?
「もったいないな」
「別の方法はなかったのかな」
「ほかの人が欲しかったかもしれないのに」
このような声は、最近とくに消費者のあいだで聞かれるようになってきました。
つまり、“モノを活かす選択”をする企業が、応援される存在になっているのです。
企業側としても、廃棄削減の取り組みは「CSRの一環」や「コスト削減」だけにとどまりません。
「共感されるブランド」への第一歩ともいえます。
たとえば、ある日用品メーカーでは、B品や期限間近の商品を限定的に販売することで、
・廃棄コストの削減
・在庫ロスの縮小
・ユーザーからのポジティブな反応
という、三拍子そろった成果を得ることができました。
“誰に、どう届けるか”を丁寧に選ぶことが、サステナブルなブランドづくりの鍵なのです。
次のセクションでは、具体的にどう在庫を活かしていくか、実践的な方法を考えていきます。
フードロス・日用品ロス削減の実践的アプローチ

「捨てない選択をしたい」
そう思っていても、実際にどう行動すればいいのか、迷ってしまうこともありますよね。
とくに日用品の卸業では、スピード感とコスト感覚のある選択肢が求められます。
ここでは、現場で無理なく取り入れられる実践的なロス削減アプローチをご紹介します。
どれも、“ちゃんと使ってもらえる”未来を想像しながら考えられる方法です。
リユース・アウトレット販売の可能性
まず注目したいのが、「まだ使えるけれど、正規販売は難しい」という商品の受け皿となるアウトレット販路です。
たとえば:
- 外箱に傷があるだけで中身は新品の商品
- 賞味期限が近いが、十分に消費可能な食品類
- パッケージ変更にともない旧デザインになっただけのアイテム
これらは本来、廃棄するにはもったいないものばかり。
それを“訳あり”や“エシカル”という価値に変えて販売することで、
企業にとっては「廃棄コスト削減」、
消費者にとっては「お得に手に入る喜び」、
社会にとっては「資源を無駄にしない好循環」が生まれます。
✅ アウトレット販売のメリットまとめ
視点 | メリット |
---|---|
企業 | 在庫の現金化・廃棄コスト削減 |
消費者 | 高品質な商品をお得に購入できる |
社会 | フードロスや資源ロスの軽減 |
ひとつひとつの商品に、まだ価値はある。
それを“もういちど活かす道”を選べることが、今の企業には求められています。
販路選びで変わる“見せ方”と“受け取られ方”
アウトレット販売を行う際に、もうひとつ大切なのが「どこで売るか」という視点です。
同じ商品でも、売る場所や伝え方によって、まったく違うイメージを持たれることがあります。
たとえば:
- フリマアプリで売れば「在庫処分っぽい」印象に
- 一般的な値引きサイトだと「安売り感」が強く出てしまう
- 一方で、エシカル専門のプラットフォームを選べば、「いい取り組みをしている会社」という好意的な印象に変わることも
つまり、商品の“出口”によってブランドの“見られ方”が変わるということです。
こんなふうに、販路は「在庫を売る場所」というだけでなく、
企業の姿勢や価値観を伝える“舞台”でもあります。
だからこそ、「サステナブルな選択をしていることがきちんと伝わる場所」を選ぶことが、
これからの時代には、とても大切になってきます。
次は、そんな販路の一例として注目されている「会員限定販売」の仕組みについてご紹介します。
会員限定販売で実現する「価格はオープン、購買はクローズド」モデル

商品を「安く売る」という選択には、どうしてもブランドの価値が下がってしまうのでは…という不安がつきまといます。
とくに日用品の卸業をされている方にとっては、既存の取引先との関係性や、市場価格への影響が心配になることもあるでしょう。
そんなときに注目されているのが、「価格は誰でも見えるけれど、実際に購入できるのは会員だけ」という会員限定販売のモデルです。
この方法なら、価格情報の透明性を保ちつつも、販売の実行を限定できるという、ちょうどよいバランスが取れます。
価格情報を守りながら販路を拡大する仕組み
「オープンだけどクローズド」――少し不思議に聞こえるかもしれませんが、これはエシカルECの新しいかたちとして注目されています。
✅ このモデルのポイント
- 商品情報や価格は公開 → SEO効果や認知拡大につながる
- 購入手続きは会員限定 → 誰でも簡単に買えるわけではないので、市場価格への影響を最小限に
- 購入者の属性が限定されている → サステナブルやエシカルな価値観に共感する顧客が中心
この仕組みにより、一般市場には出回らずに済むため、
「アウトレットで売る=値崩れ」といった懸念を抱かずに、安心して在庫を活かすことができるのです。
また、「会員制」というだけで、ちょっと特別感のある販路になります。
“訳あり”という言葉ではなく、“ちゃんと選ばれた商品”として伝えることも可能です。
ブランド価値を損なわない販売チャネルの条件
在庫処分やアウトレット販売を行う際に、もっとも避けたいのが「ブランドが安っぽく見えること」。
せっかく築いてきた信頼やイメージが、一時的な値引き販売で損なわれてしまっては本末転倒です。
では、ブランドを守りながら、在庫を売るには?
✅ 販路選びで気をつけたい3つの条件
- 誰が買うかが明確になっていること
- 販売先がブランド価値に共感してくれる層であること
- エシカルでポジティブな文脈の中で紹介されること
この3つを満たせば、たとえ値下げ販売であっても、「ちゃんと考えている会社だな」と受け取ってもらえるようになります。
「ただ安く売る」ではなく、「背景のある価格」を提示すること。
この考え方が、これからの在庫活用には必要になってきます。