谷澤まさみ
谷澤まさみ

毎月やってくる「自分じゃないみたいな数日間」。それ、PMDDかもしれません。私がその事実に気づき、病院に行くまでの5日間を正直に綴りました。目次を見て必要なところから読んでみてください。

PMDDとは何か(共感と前提の共有)

「また月経前のイライラかな」と思っていたのに、いつもより明らかに情緒が不安定。涙が止まらなかったり、突然怒りが爆発したり、そんな自分に自己嫌悪……。
それが、PMDD(月経前不快気分障害)かもしれないと知ったのは、かなり後になってからでした。

この記事では、「自分にもあてはまるかも」と感じている方に向けて、PMDDとは何か、そしてPMSとの違いについて、専門用語をできるだけ使わず、わたし自身の体験を交えながらお伝えしていきます。

「これって普通なの?」「どこまでが我慢すべきことなの?」と悩むすべての方のために、こころの揺れに名前を与えるための記事です。


月経前に起こる「こころの異変」

まずお伝えしたいのは、PMDDという言葉を知らなかった頃の私自身も、「これは私の性格の問題かもしれない」と思い込んでいたことです。

  • 些細なことでイライラして、家族や同僚に当たってしまう
  • その直後に「どうしてあんな言い方をしたんだろう」と落ち込む
  • 夜になると涙が止まらなくなり、布団の中で自分を責める

こんな“情緒のジェットコースター”が、毎月決まった時期にやってくるようになっていました。

いわゆる「PMS(月経前症候群)」という言葉は聞いたことがあっても、それはもっと軽い不調や不快感のことだと思っていたんです。でも実際には、日常生活に支障をきたすほどの精神的な不調が起こることがある。その重症型が、PMDDです。

PMDDの症状は、ホルモンバランスの変化に対する脳や神経の過敏な反応と関係していると考えられています。たとえば、

  • 強い怒りやイライラ
  • 抑うつ気分・絶望感
  • 不安やパニック
  • 自分を責める思考
  • 集中力の低下
  • 睡眠障害(過眠・不眠)

こうした症状が、月経の1〜2週間前にあらわれ、月経が始まるとおさまる。周期的に繰り返すのが特徴です。

✅ ポイント:PMDDは「気のせい」ではなく、医学的に認められた月経関連の気分障害です。


PMSとの違いとPMDDの定義

よく混同されるのが、「PMSとPMDDの違いは何か?」という点です。

PMS(Premenstrual Syndrome)は、月経前に起こる身体的・精神的なさまざまな不調の総称です。一方、PMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)は、その中でも精神的症状が重く、日常生活に大きな支障をきたす状態を指します。

違いを整理すると、以下のようになります。

分類PMSPMDD
症状の種類身体的不調+軽度の精神症状精神的症状が中心で重い
精神症状の強さイライラや不安程度抑うつ・怒り・絶望など深刻
影響の度合い我慢できる範囲のことが多い仕事や人間関係に支障が出る
発症率約5〜8割の女性が経験約3〜8%の女性にみられるとされる

PMSもつらいものですが、PMDDは「自分らしさを奪われる」と感じるほど深刻なケースが多いです。

わたし自身も、仕事のパフォーマンスが落ちたり、パートナーとの関係がギクシャクしたりと、“月に一度の破壊期間”のような感覚がありました。けれど、「毎月来るものだし」「我慢すればいつか終わる」と思っていたんですよね。

でも、それは我慢すべきことではなかったと、今ならはっきり言えます。

PMSとPMDDの違いを知ることが、受診やセルフケアの第一歩です。

私がPMDDに気づくまで

PMDDという言葉を初めて見たとき、正直「これだ…」と感じたんです。けれど、そこにたどり着くまでには長い時間と、たくさんの自分責めがありました。
ここでは、わたし自身がどうやってPMDDという存在に気づいたのかをお話しします。同じようにモヤモヤとしたつらさを抱えている方が、「これは私にも当てはまるかもしれない」と気づくきっかけになればと思います。


はじめは「ただのストレス」だと思っていた

わたしのPMDDは、ある日突然ではなく、じわじわと日常に入り込んでいたように思います。

たとえば、月末の業務で忙しくなる時期。もともと仕事は嫌いじゃなかったのに、ある時からどうにも集中できず、些細なことでイライラして、つい同僚にきつく当たってしまうように。
夜になると、「あんな言い方しなければよかった」と自分を責めて眠れなくなる。そんなことが増えていきました。

でも当時は、仕事のプレッシャーや人間関係、栄養不足、運動不足……あらゆるもののせいにしていて。
実際、「今の自分は余裕がないんだ」「ストレスが溜まってるだけ」と思い込んでいました。

✅ だけど本当は、症状が毎月決まったタイミングで出ていたんです。
でも、その周期性に気づかないくらいには、わたしは「自分に鈍感」になっていました。


気分の波に振り回される日常

今振り返れば、「これはただの疲れや性格の問題じゃなかった」と思えるのですが、その時のわたしには自分の感情がコントロールできない理由がわかりませんでした。

  • 朝起きた瞬間から「もう何もかもやりたくない」と思う
  • パートナーの言葉に急に爆発して泣き出す
  • 外では笑顔で振る舞うけど、帰宅後にぐったりして動けない
  • SNSを見ては「私だけが取り残されてる」と落ち込む

そのすべてが、月経前の数日間に集中していたんです。

でも、周囲には「また機嫌悪いの?」と言われてしまうし、自分でも説明がつかない。
「もっと前向きにならなきゃ」とか、「感情の波をコントロールできない自分が悪い」とか……。とにかく、自分を責める思考が止まりませんでした。

ある時、どうしようもなくなってネット検索を始めました。
「月経前 情緒不安定」「生理前 別人のよう」「怒り 涙 疲れた」……。出てきたキーワードの中に、「PMDD」という文字を見つけたんです。

✅ 「こんなに当てはまる症状があるなんて…」
その瞬間、はじめて“これは私だけじゃない”と感じられたことを、今でもよく覚えています。

病院に行くまでの5日間の記録

PMDDかもしれないと気づいてから、すぐに病院へ行けたわけではありませんでした。
むしろ、そこまでの数日間が一番しんどくて、一番孤独だったかもしれません。

ここでは、実際にわたしが病院を予約するまでの5日間を、感情の流れとともに振り返ります。
もし今、似たような状況にいる方がいたら、「一歩ずつでも大丈夫」と思ってもらえたらうれしいです。


【1日目】怒りと無力感で涙が止まらない

朝から、なぜかずっとイライラしていました。
パートナーの何気ない一言に爆発して、自分でも驚くくらい感情をぶつけてしまい、その直後から涙が止まらなくなったんです。

「どうしてあんなに怒ったんだろう」
「またやってしまった」

感情の荒波が一度くると、コントロール不能な自分に嫌気がさす
そして自己嫌悪が追い討ちをかける。

夜になっても心が休まらず、眠れないまま布団の中で目を閉じました。
「こんな自分、もうイヤだな」――そう思ったのが、この5日間の始まりでした。


【2日目】検索魔になり、自己診断で不安が悪化

翌日は、仕事に行くふりをしてカフェに入り、ひたすらスマホで検索しました。

  • 「PMDD 自己診断」
  • 「生理前 うつ」
  • 「感情コントロールできない 女性」

出てくる情報は山ほどありましたが、それを読むほどに不安が膨らんでいくばかりでした。
自分で自分を診断しようとするほど、「やっぱり私、どこかおかしいのかも」と思えてきてしまう。

✅ このとき本当に必要だったのは、「情報」じゃなくて「安心」だったんですよね。

でもその時のわたしは、正解を必死に探してしまっていた
気づけば数時間が経っていて、仕事にも戻れず、さらに自分を責めました。


【3日目】誰にも相談できず孤立感が深まる

「こんなこと、人に話していいのかな」
そう思って、パートナーにも、友人にも、母にも、何も言えませんでした。

なぜかというと、「甘えていると思われそう」「大げさって言われたらどうしよう」という気持ちが強かったから。

一人暮らしの部屋で、静かすぎる空間に自分の思考だけがぐるぐるまわる。
SNSを開いても、みんなは日常をこなしているように見える。
「私だけが壊れてるのかな」って、真剣に思っていました。

✅ この日が、いちばん孤独だったかもしれません。


【4日目】ようやく記録を始めて気づいたこと

ふと思い立って、スマホのメモに感情を記録してみました。
「今日は起きた瞬間からつらかった」「午後から少し落ち着いた」「夜はまた涙が出た」など、短くていいから正直に書いていく。

すると、書きながら少し冷静になれて、自分の感情に距離を取ることができたんです。

そして記録を読み返してみると、はっきりと周期性があることに気づきました。
「あれ、これって、先月もこの時期だったかも?」と。

✅ この“気づき”が、受診への背中を押してくれたように思います。


【5日目】婦人科を予約。診察への不安と期待

「病院に行くべきかもしれない」と思った時、まずは婦人科を検索しました。
でも、その瞬間もまた迷いがありました。

  • 本当にPMDDなのか、ただの思い込みじゃないか
  • 婦人科でこんな相談をしてもいいのか
  • もし「気のせいですよ」と言われたらどうしよう

いろんな不安が頭をよぎりましたが、「誰かに話すこと自体が、もう必要なんだ」と思って、思い切って予約ボタンを押しました。

すると、予約完了メールが届いた瞬間、ふっと肩の力が抜けたんです。
「やっと、誰かに話せる」――そう思えたことが、あの5日間の中で最初の希望だったかもしれません。

✅ 行動を起こしたからといって、すぐにすべてが解決するわけじゃない。
でも、「助けを求めてもいい」と思えたことが、私にとっての大きな一歩でした。

受診してわかったこと

「病院に行く」――それだけのことが、なぜあんなにも勇気のいる選択だったのか。
けれど、実際に受診してみて思ったのは、「もっと早く来てもよかった」という率直な感想でした。

この章では、わたしがPMDDの可能性で婦人科を受診した際にどんな話をされ、どんな選択肢が提示されたのかを共有します。
「病院で何がわかるのか不安」という方に、少しでも参考になればうれしいです。


病名がつくことで得られた安心感

診察室では、まず今の気持ちや状態を丁寧に聞いてもらえたことが印象的でした。
婦人科=内診というイメージが強かったけれど、わたしが行ったクリニックでは、問診と対話が中心でした。

症状を伝えると、医師からはこう言われました。

「これはPMDDの可能性があります。いわゆるPMSの重症型です。」

その瞬間、ほっとする気持ちと、じんわり涙が出てくるような安心感がありました。

それは、「病名がついてよかった」というよりも、
“つらさに理由があった”とわかったことが、救いになったんだと思います。

自分だけがおかしいと思っていた感情に、医学的な説明がつく。
それだけで、“わたしのせいじゃなかった”と自分を許せるきっかけになりました。

✅ 病名や診断は「ラベル」ではなく、適切なケアの入口だと感じました。


薬とカウンセリングという選択肢

診察の中で提案されたのは、主に以下のようなケアの選択肢でした。

  • 低用量ピル:ホルモンの波を安定させることで症状を軽減
  • 抗うつ薬(SSRI):感情の起伏を緩やかにする効果が期待される
  • カウンセリング:思考のクセや感情の扱い方を整理していく

「薬を使うことには抵抗がありますか?」と丁寧に聞かれたのもありがたかったです。
無理にすすめられることはなく、自分の納得できるペースで選べるような雰囲気がありました。

わたし自身は、まず記録を続けながら、低用量ピルの使用から始めてみることにしました。
その後、必要であればカウンセリングも検討する形で。

診察後にわかったのは、PMDDには正解が一つではないということ。
症状や生活スタイルに合わせて、薬・環境・心の支えを組み合わせながら、
“わたしに合った対処法”を見つけていく時間なのだと思いました。

✅ 「薬=最後の手段」ではなく、選択肢の一つとしてフラットに考えることが大切です。

同じように悩む人へのメッセージ

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
もしかしたら、あなたも今まさに、同じような「つらさ」と向き合っている最中かもしれません。
この章では、かつての私と同じように“自分の気持ちに戸惑っている誰か”に向けて、心から伝えたいことを綴ります。


我慢しないでいい理由

PMDDに限らず、女性の体と心にまつわる不調は、「気のせい」「そのうち治る」と流されやすいものです。
だけど実際には、毎月同じようなタイミングで、生活も人間関係も壊れていくような感覚を抱えている人がたくさんいます。

そんな状態を“性格のせい”や“甘え”にしてしまうのは、もう終わりにしませんか?

わたし自身、受診の前は「病院に行くほどじゃない」と何度も思い直しました。
でも、つらいと感じていること自体が、もう十分“理由”になるんです。

✅ 体調を整えるために病院へ行くように、心のバランスを取り戻すために相談するのも当たり前のこと
我慢することが美徳ではなく、自分を守る行動こそが、自分らしく生きる第一歩だと、今は本当にそう思います。


記録と受診のすすめ

とはいえ、「いきなり病院に行くのはハードルが高い」と感じる方もいると思います。
そんなときにおすすめしたいのが、まずは感情や体の変化を記録してみることです。

  • 朝と夜の気分を5段階でメモする
  • 怒りや悲しみが出たときの状況をひとこと書く
  • 生理周期との関係をざっくり把握してみる

たったこれだけでも、見えてくるものがあります。
そして、いざ受診する際にも、その記録がとても役に立ちます。
「うまく説明できるか不安」という方こそ、メモを一緒に持っていってください。

✅ 記録は、自分を“見張る”ためじゃなく、“味方になるため”にあります。

そしてどうか、「病院でちゃんと受け止めてもらえるのかな?」と不安なまま、何ヶ月も過ごさないでください。
診察は、あなたを診断する場所というよりも、あなたの“声”を受け止める場所です。

まとめ:まずは「自分を疑わない」ことから

PMDDという言葉を知ったとき、あなたはどう感じたでしょうか。
もし、「私にも似ているかもしれない」と思ったなら、それだけで一歩前進です。

ここまで読んでくださったあなたに、最後にどうしてもお伝えしたいのは、
つらさに“根拠”がなければ動けない、という思い込みを手放していいということ。

どんなにつらい感情にも、必ず意味があります。
まずは、「私がおかしいんじゃないか」という考えを、一度、静かに脇に置いてみてください。
それだけでも、ほんの少し、心の中に余白が生まれます。


気づきのきっかけを増やすために

PMDDに限らず、月経や心の揺らぎにまつわる悩みは、“気づける環境”がなければ、見過ごされやすいものです。
そのためにできることは、小さなことでかまいません。

  • 気持ちの波をスマホにメモする
  • 同じ悩みを抱える人の声を読む
  • 生理アプリのメモ欄を活用する
  • 「なんとなく不調」な日を意識してみる

“わたしだけじゃなかった”と気づける瞬間が、今後の行動に大きな意味をもたらしてくれます。

気づくきっかけがあれば、少しずつ視野が広がり、選択肢も見えてきます。
そしてそのすべてが、自分らしく生きる力につながっていくと私は信じています。


信頼できる専門家とのつながりを

PMDDの診断や治療は、婦人科や心療内科など、専門知識を持った医師との対話が欠かせません。
でも、それだけじゃありません。

たとえば、信頼できる友人やパートナーに話してみる。
カウンセリングや支援窓口、当事者のコミュニティにアクセスしてみる。
自分の悩みを“声に出す”こと自体が、ケアの一部だと感じています。

✅ あなたの気持ちは、あなたが思っている以上に、ちゃんと理由があります。

その声を無視せずに、ていねいに扱ってくれる人とつながること。
そして、必要なケアを必要なときに“選べる”状態にしておくこと。
それが、フェムケアの原点だと私は思います。


もし今、「ひとりで抱えるのはしんどいかも」と思っていたら、
わたしたち《フェムケアの部屋》が、あなたのケアのきっかけになれたらうれしいです。

✅ 気になることや体調の変化を、もっと気軽に相談してみませんか?

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