
店頭で売れ残ったカーディガン。その在庫が、誰かの手に渡り“喜ばれる商品”に変わった理由とは?ブランドを守りながら在庫を活かすヒントが詰まっています。目次を見て必要なところから読んでみてください。
あのカーディガンが“売れなかった理由”を今、振り返る
「なぜ売れなかったのか?」
いま、あのカーディガンを手に取りながら、そんな問いが浮かびました。素材も悪くないし、縫製も丁寧。だけど売れなかった――この“在庫”を、ただの失敗と片づけるには、少し惜しい気がしたんです。在庫にまつわる悩みは、多くの方が抱えていると思います。だからこそ、私の小さな気づきを、そっとシェアさせてください。
シーズンを過ぎて動かなくなった在庫
そのカーディガンが入荷したのは、ちょうど秋の立ち上がりの頃でした。
手触りの良いミドルゲージのニットで、ベーシックだけど、前立てのデザインにちょっとした遊び心もある。自分なりに「これはいける」と思っていました。
ところが、売り場に出しても反応が鈍く、想定よりもずっと在庫が残ってしまったんです。気がつけば季節は深まり、冬物が前面に出始める時期に。売れ残ったカーディガンたちは、店頭のすみっこで、静かに置かれていました。
ファッション業界ではよくあることかもしれません。シーズンを逃すと、商品の“賞味期限”は一気に短くなる。このスピード感に、正直少し戸惑っていました。
値下げしても売れず、処分も検討
在庫を抱えたままでは、資金もスペースも圧迫されてしまう。そこで値下げをして、セール品として再度店頭に並べました。でも、結果は芳しくなく…。
「セールって、こんなに難しかったっけ?」
いま思えば、単純な値下げだけでは、その商品を「選ぶ理由」までは生まれなかったんだと思います。
やがて、処分の選択肢も頭をよぎるようになりました。廃棄にかかるコストや、気持ちの落ち込みを感じながら、「本当に、これしか道はないのかな?」と何度も自問しました。
でも、あのカーディガンを前にしたとき、ふとこんな気持ちになったんです。
「この子、まだ誰かにとって“必要”かもしれない」
そう思えた瞬間が、在庫を“資産”に変える第一歩になったのかもしれません。
✅ 在庫が動かないのは、商品に価値がないからじゃない
✅ 届け方や出会い方が、ちょっとズレていただけ
この経験が、私にとってエシカルな視点を持つきっかけになりました。
そして、次にどんな行動を選んだのか——その続きを、次の章でお話しさせてください。
「この在庫には、まだ価値がある」——そう気づけた瞬間
“売れ残り”という言葉には、どこかネガティブな響きがありますよね。私もずっとそう思っていました。でも、ある出来事をきっかけに、見方ががらりと変わったんです。あのカーディガンは、「売れなかった商品」ではなく、「まだ、出会えていないだけの商品」だった。そんな気づきが、小さな希望を連れてきてくれました。
捨てるには惜しい品質とこだわり
そのカーディガン、手に取ると本当に気持ちのいい肌ざわりなんです。ウールに少しだけアクリルを混ぜることで、チクチクしにくくて、でも暖かい。そのバランスにこだわって、何度もサンプルを作り直しました。
縫製もきちんとしていて、着たときに肩が落ちすぎず、でも抜け感が出るように設計していて。ファッションに詳しくない方でも、着た瞬間に「なんか、これいいかも」って思ってもらえるように、そんな想いを込めて作ったものでした。
だからこそ、処分という選択肢に踏み切る前に、もう一度この子の“魅力”をちゃんと伝えてみたくなったんです。
「誰にも届かなかった」のではなく、「伝えきれていなかった」だけかもしれない。
そう思い直して、あることを試してみました。
SNSでの反響と“誰かのために”という気持ち
カーディガンの写真を、スマホで何枚か撮りました。モデルさんもスタジオも使わず、自宅の白壁と自然光だけ。とびきりおしゃれではないけれど、リアルな日常に馴染む姿を意識しました。
その写真に、開発時の想いや、実際に着てみた感想を書いて、SNSに投稿したんです。
すると、思いがけず反響がありました。
✅「こういうシンプルなもの、探してました」
✅「着心地が良さそうで気になっています」
✅「これ、母にプレゼントしたいです」
ひとつひとつのコメントに、胸がじんわりと温かくなっていきました。
そのとき、心の奥でふっと何かが変わった気がしました。
「この商品を売りたい」じゃなくて、「この商品が誰かの役に立てたら嬉しい」
そんな気持ちに、いつのまにか変わっていたんです。
それは、ただの“在庫処分”とはちがう感覚でした。
自分のこだわりや愛着が、誰かの毎日に寄り添える可能性がある。
そう思えたとき、「まだ価値はある」と確信できました。
そして、この出会いの仕組みをもっと広げられたら…と考えるようになったのです。
その想いが、エシカルな販路への一歩につながっていきました。
売れ残り=マイナスではなく、“資産”としての在庫へ
売れ残った商品を見るたびに、「在庫=悪者」という思い込みが、心のどこかにありました。でもそれって、本当でしょうか?誰かにとってはまだ“出会っていないだけの良いモノ”だとしたら——。在庫の意味を「マイナス」から「活かせる資源」へと捉え直したことで、販路の見直しが始まりました。ここからは、私がたどり着いた販売の選択肢について、お話ししていきます。
ブランド毀損せずに販売できる販路を模索
SNSで反響をもらったとはいえ、それをそのままオープンな市場に出してしまうと、ブランドイメージが崩れてしまう心配もありました。
特にアパレルの場合、「定価で買ってくれた方への誠意」は大切にしたいという気持ちがあります。
たとえば、店舗で8,000円で販売していたものが、突然ネットで2,000円になっていたら……。
「え?この前買ったのに」と、ちょっと残念に思ってしまいますよね。
そこで探し始めたのが、ブランド価値を守りながら在庫を活かせる販路です。
ただ安く売るだけではなく、“誰に・どんな形で届けるか”にこだわること。これが、私にとって大きな転換点になりました。
そして出会ったのが、クローズド・バイイングという仕組みです。
クローズド・バイイングという安心設計
クローズド・バイイングとは、簡単にいうと
「誰でも商品は見られるけれど、買えるのは会員だけ」という仕組みです。
このモデルの良いところは、以下の2点に集約されます。
特徴 | メリット |
---|---|
商品情報は公開 | SEOやSNSでの発信がしやすい |
購買は会員限定 | 安売りイメージが広がらず、ブランドが守られる |
このように、オープンな場での価値訴求と、クローズドな購買体験の両立が可能になります。
私自身、「安く買える場所」ではなく、「想いのある商品と出会える場所」という表現に共感しました。
✅ 安さだけじゃなく、「ちゃんと選ばれた人に届く」
✅ だからこそ、出す側も“誇り”を持って在庫を手放せる
この安心感が、在庫を資産として再活用するための土台になりました。
売れなかった理由を責めるのではなく、「どこで・誰に・どう届けるか」を変えるだけで、在庫の価値は見事に蘇る——。
この体験が、私の中で“売れ残り”という言葉の意味を、大きく塗り替えてくれたのです。
廃棄から救われたカーディガンが、誰かの手元に届くまで
廃棄を考えていたカーディガンが、思いがけない形で「ありがとう」と言ってもらえる商品になった——その出来事は、私にとって忘れられない原点です。
在庫が、ただの“余りもの”ではなく、人の心をあたためる「贈り物」に変わる。そのプロセスは、数字では測れないほどの喜びと意味を持っていました。
エシカルな買い物を選ぶ人たちの存在
私が販売の場として選んだのは、「エシカルな買い物」を大切にするプラットフォームでした。
ここでは、「安いから買う」のではなく、“もったいないを減らす選択”として買う人たちが集まっています。
たとえば、こんな声をいただきました。
✅「届いたとき、丁寧に包まれていて、作った人の気持ちが伝わってきました」
✅「着てみたら想像以上に可愛くて、すごく気に入りました」
✅「エシカルって、あたたかいんですね」
そうなんです。
ただ在庫を処分したい人と、ただ安く買いたい人をつなぐのではなく、
“想いをこめてつくった商品”と、“想いのある買い方をしたい人”が出会える場所だったんです。
このマッチングが成立したとき、在庫は初めて「価値」として再生されます。
売れなかった在庫が“喜ばれる商品”に変わった
一度は売れなかったカーディガン。
でも、そこには品質も想いもちゃんとあったから、正しい出会い方ができれば、ちゃんと選ばれるということを実感しました。
そして何よりうれしかったのは、そのカーディガンを受け取った方が「これは誰かにプレゼントしたい」と言ってくださったこと。
“売れ残り”だったものが、今度は“誰かに贈りたいもの”に変わっていたんです。
あぁ、これはもう「在庫」じゃない。
きっと“役目を見つけた商品”なんだ。
そう思ったとき、私はふと口元がほころびました。
この経験を通じて、
✅ 「もったいない」がきっかけでも、
✅ 「想い」でつながれば、
✅ モノは再び、誰かの“お気に入り”になれる。
そんな未来があることを、これからも多くの人に伝えていきたいと思っています。
OEFという選択肢|在庫を再価値化する仕組み
これまで「在庫=重荷」だと思っていたものが、「誰かの役に立つ可能性」に変わった――そのきっかけとなったのが、OEFというプラットフォームとの出会いでした。
ただ売る場所を変えるだけでなく、「どう売るか」「誰に届けるか」まで設計された仕組みが、私の在庫に新しい命を吹き込んでくれたのです。
誰でも見れる、でも買えるのは選ばれた会員だけ
OEFの特徴は、「価格はオープン」なのに「買えるのは会員限定」という仕組み。
この“クローズド・バイイングモデル”が、私のようにブランドイメージを大切にしている出品者には、とても安心できるポイントでした。
✅ 誰でも商品情報や写真は見られる
✅ でも、実際に購入できるのは、登録されたサブスク会員のみ
つまり、世間に広く値下げ情報が出回る心配がないのです。
これにより、
- 「以前、定価で買ってくれたお客様」への誠意も守れる
- 「市場価格を崩したくない」という取引先への説明も明確にできる
- 「在庫を活かしたい」という本音を、堂々と表に出せる
そんな、出品者にとっての安心と誇りを両立できる場になっています。
ブランドを守りながら、フードロスのように“在庫レスキュー”
食品の世界では「フードロス」という言葉が浸透してきましたが、アパレルや日用品にも“モノのロス”は確実に存在します。
廃棄コストをかけて捨てられてしまう商品たち。その多くが、まだまだ使えるものばかりです。
OEFでは、こうした「まだ役目を果たせる商品」を“レスキュー”する発想が根付いています。
「売れ残り」じゃなく、「選ばれ待ち」の商品。
そんな言葉がぴったりくるのが、このOEFの仕組みです。
実際、私のカーディガンもOEFで再び注目を集め、“エシカルでお得な商品”として、多くの人に喜んでもらえました。
これは決して、「安く叩き売ったから」ではありません。
買い手も「誰かの想いを受け取るような気持ち」で選んでくれているから、商品そのものの価値が、ちゃんと伝わるのです。
✅ 廃棄せずに、再び価値を届けられる
✅ ブランド価値も守りながら、社会貢献にもつながる
✅ お客様との新しい関係性が築ける
そんな三方よしの販路が、ここにはありました。
「捨てるか、売り切るか」の二択じゃない。
“次に活かす”という第三の選択肢があることを、私自身の経験を通して、心から伝えたいと思っています。