谷澤まさみ
谷澤まさみ

「売れ残った在庫、どう処分すべき?」そんな悩みに寄り添いながら、税務リスクからエシカルな解決法までやさしく解説します。目次を見て必要なところから読んでみてください。

滞留在庫とは?処分リスクを抱える商品たち

在庫が倉庫にずっと眠ったままになっている…そんな商品を前に、「このままで大丈夫かな」と不安になることはありませんか?
今回は、滞留在庫(たいりゅうざいこ)についてお話しします。特に、税務や処分のことを考える前に知っておきたい大切なポイントを、できるだけわかりやすく解説していきます。

滞留在庫は、見えにくいコストやリスクを生み出す存在です。ですが、考え方次第で「もったいない在庫」が「新しい価値」へと変わるチャンスにもなり得ます。まずは、基本から一緒に整理していきましょう。

滞留在庫の定義と発生する理由

滞留在庫とは、一定期間以上売れ残ってしまった商品や、出荷・販売の予定が立っていない在庫のことを指します。業種によって期間の定義はさまざまですが、たとえば「半年以上動きがない商品」を滞留と判断することもあります。

では、なぜ在庫は滞留してしまうのでしょうか?理由は一つではありません。

✅ 販売予測のズレ
✅ 季節商品や流行商品の売り切り失敗
✅ 取引先キャンセルや販売停止
✅ パッケージリニューアルなどによる旧商品化

こうした原因によって、まだ使える・まだ食べられる商品たちが行き場を失ってしまうのです。特に食品やコスメなど、賞味期限や使用期限がある商品はスピード感が求められます。判断が遅れると、リカバリーが難しくなるケースもあります。

「売れない商品」として見てしまうと気が重くなりがちですが、「どうしたら誰かの手に渡せるだろう?」と考えることで、行動の選択肢が広がっていきます。

賞味期限切れ・シーズン落ち・型落ち品などの例

滞留在庫と聞くと、なんだか大きな問題のように思えるかもしれません。でも実際には、日々の業務の中でよくあるケースが多いんです。

以下に、よく見られる滞留在庫の例をあげてみます。

商品のタイプ滞留しやすい理由
賞味期限が近い食品流通タイミングを逃した/販促が間に合わなかった
シーズン商品クリスマスやバレンタインなど期間が限定されている
型落ちの美容・家電商品新モデルが出ることで販売優先度が下がる
パッケージ変更品内容は同じでも「旧パッケージ」で敬遠される
セット売りのバラ品セット解体後に残った端数が売りにくい

これらの商品は、「もう売れない」と見切りをつけてしまうにはまだ価値が残っていることが多いです。たとえば、食品なら家庭用・訳あり価格で喜ばれることもありますし、旧型コスメでも自分用にお得に買いたい人はたくさんいます。

大切なのは、「売れ残ったから終わり」ではなく、誰かのニーズとどうマッチできるかを考えることです。視点を少し変えるだけで、もったいない在庫が、誰かの“ちょうどいい選択”になるかもしれません。

「あなたの商品を必要としている誰かが、きっとどこかにいる」
その可能性を信じて、次の一歩を考えていきましょう。

実際に損金算入されるケースとされないケース

評価損を会計処理したからといって、それがそのまま損金(そんきん)として認められるとは限らないのが、税務のむずかしいところです。特に、税務調査のときに「否認されてしまった」という声を聞くことも少なくありません。

ここでは、損金算入されるために必要なポイントと、注意しておきたい典型的な否認例について、わかりやすくまとめていきます。
ひとつひとつの判断が、あとから大きな違いを生むこともあるからこそ、今のうちに確認しておきましょう。

税務調査で否認される典型パターン

損金に計上した評価損が、税務署に認められなかった…。そんな悲しい結果にならないために、否認されがちなケースを知っておくことが大切です。

処分前の記録がない
在庫を処分した日や方法、対象商品がわかる記録が残っていないと、「本当に廃棄したのか?」と疑われてしまいます。

合理的な評価額の根拠がない
ただ「売れなさそうだから1個100円」といった感覚的な見積もりではNGです。相場や販売履歴をもとに、明確な算定根拠が必要になります。

毎年同じ商品を評価損にしている
在庫処分がルーティン化していると、税務署から「恣意的な評価」とみなされやすくなります。

利益調整と見なされるケース
期末に利益が出そうなときだけ評価損を計上すると、「利益を下げるための操作」と疑われてしまう可能性もあります。

このように、評価損の計上はルールにのっとって、しっかり証拠を残しておくことが大前提。感覚で判断するのではなく、「第三者にも説明できるように」が合言葉です。

減価基準と合理的な見積もりの重要性

評価損が認められるかどうかのカギは、減価の理由が明確かどうか、そしてその評価額が妥当かどうかにあります。

「どのくらい値下がりしたか」は、“市場価格”や“販売実績”などを使って、できるだけ客観的に示すことが必要です。たとえば以下のような情報があると安心です。

評価額の根拠に使える資料解説
直近の販売価格やセール履歴実際にいくらで売ったかが証明になります
類似商品の市場価格同ジャンルの商品がどの程度の価格帯で売られているか
商品の状態に関する記録賞味期限やパッケージ破損など、値下がりの理由

こうした情報が揃っていれば、たとえ売れ残った商品でも、「これだけの理由があるから価値が下がった」と自信を持って言えます。

また、あらかじめ社内で評価損のルールを決めておくのもおすすめです。たとえば「賞味期限3か月を切ったら○割評価減」など、一定の基準があると判断に迷わず、記録もしやすくなります。


「これはもう価値がないから、評価損にしよう」ではなく、
「この商品は、こういう理由でこの価格に見直しました」と説明できる状態をつくること。

これが、損金として認めてもらえるかどうかの分かれ道です。
税務処理ってちょっと難しいですが、だからこそ、ていねいな準備と記録が未来の自分を守ってくれるんですね。

エシカルな経営を目指すなら、在庫との向き合い方にも、やさしく誠実なスタンスを大切にしていきたいですね。

滞留在庫の処分方法と、その税務インパクト

売れ残ってしまった商品。見て見ぬふりをしても、倉庫のスペースは限られていて、心にもモヤモヤが残りますよね。でも、「捨てる」だけが選択肢ではありません。
実は、滞留在庫にはいくつもの“活かし方”があるんです。そして、それぞれに異なる税務上の取り扱いがあることも忘れてはいけません。

ここでは、代表的な4つの処分方法と、それぞれの税務インパクトと注意点について、やさしくご紹介していきます。
あなたの商品にぴったりの“次の道”が見つかるかもしれません。

フリマ・在庫買取・寄付・廃棄などの選択肢

在庫をどう処分するかは、ただの在庫整理にとどまらず、会社の理念や、社会との関わり方を表す行動でもあります。どんな方法があるのか、まずは整理してみましょう。

処分方法特徴
✅ フリマサイトや自社セールでの販売小ロットでも対応可能。「訳あり品」として再流通しやすい
✅ 専門業者への在庫買取まとめて処理できる。価格は低めでも一括現金化しやすい
✅ 福祉団体や地域団体への寄付社会貢献につながり、ブランド価値にもプラス効果
✅ 廃棄(処分)売れ残った場合の最終手段。コストと税務に要注意

たとえば、賞味期限が迫った食品や旧パッケージの化粧品などは、訳あり商品としてECで販売することで、新たな価値を見出すこともできます。また、地元の子ども食堂や福祉施設に寄付するという選択も、心に残る温かい循環のひとつです。

ただし、どの方法にも税務処理上の違いがあるため、次にその注意点を見ていきましょう。

処分方法別の税務処理と注意点

在庫の処分は、売上・費用・寄付金・損失といった形で帳簿に影響を与えます。処分の仕方によって、損金に算入できるかどうかも大きく変わるため、事前に把握しておくことが大切です。

処分方法税務上の取扱い注意点
✅ フリマ・自社セールでの販売売上として計上評価損の根拠を残しつつ、適正価格で販売すること
✅ 在庫買取業者への販売売上計上。ただし評価減も可能売却前の減価処理を忘れずに記録すること
✅ 寄付一部損金扱い可(一定条件あり)寄付先・目的・金額によって扱いが変わるため税理士と確認を
✅ 廃棄廃棄損として損金算入可能写真・日付・廃棄証明など、証拠資料の保存が必須

特に注意したいのは、「寄付」や「廃棄」の場合です。
たとえば寄付は、「社会貢献だから全部経費で落ちる」というわけではありません。税法上は“寄付金”として別枠で計上されるため、一定の上限や制限がかかることがあります。

また、廃棄については「処分した証拠」が必要です。領収書や廃棄の写真、日付の記録などをきちんと残しておくことで、税務調査時にも安心して説明できる状態をつくっておけます。


どの方法にも、それぞれの想いと目的があります。
単に「損失を減らすため」ではなく、どうすれば商品に“最後まで価値を持たせられるか”を考えることが、これからの時代に求められている視点だと思います。

エシカルな処分とは、利益だけでなく、人や地域、環境とのつながりも大切にすること。
「売れ残り」ではなく、「次の誰かへとバトンを渡す商品」として、在庫の新しい未来を一緒に探していけたらうれしいです。

谷澤まさみ
谷澤まさみ

滞留在庫について、定義やリスク、対処法まで全体像を整理したい方はこちらも参考になります。

👉 滞留在庫とは?デッドストック・余剰在庫との違いと対策をわかりやすく解説

滞留在庫を“エシカルに価値変換”する方法

在庫が長く倉庫に眠っていると、「早く処分しなきゃ」と焦る気持ちが出てきますよね。けれど、その商品にはまだちゃんと価値があるかもしれません。
たとえば賞味期限が少し短いだけ、パッケージにキズがあるだけ。そういった理由で「販売に向かない」とされた在庫も、視点を変えれば誰かの“ちょうどいい選択肢”になることがあります。

今回は、そんな滞留在庫をただ処分するのではなく、“エシカルに”新しい価値へと変えていく方法をご紹介します。心ある販路と、丁寧な設計で、商品もブランドも守ることができるんです。

OEFのようなフードロス・アウトレット販路を活用

滞留在庫を活かす方法として注目されているのが、エシカルECやフードロス系のアウトレットプラットフォームです。たとえばOEFのようなサービスでは、期限が迫った食品や季節外れの雑貨などを、「訳ありだけど、ちゃんと価値のある商品」として再流通させる場を提供しています。

販売はサブスク会員のみに限定されているので、市場価格を守りながらお得に届けることができます
出品者はブランドや在庫のストーリーを伝えることができるため、共感を得ながら販売できます
売れたときだけ手数料が発生する仕組みなので、コストのリスクも抑えられます

「値崩れしそうで怖い」「ブランドイメージが気になる」という声もよく聞きますが、OEFのようにクローズドな販路での展開なら、そのリスクを最小限にしながら、社会貢献と在庫整理の両立が可能になります。

なにより、買う人も「フードロスを減らしたい」「エシカルな選択をしたい」と考えている方が多いので、出品自体が“共感される行動”になるんです。

値崩れせずにブランド価値を守る出品設計とは

エシカルな販路を使う際にもうひとつ大切なのが、ブランド価値を守る“出品の工夫”です。ただ安く売るだけでは、せっかく育ててきたブランドの信頼が損なわれてしまうこともあります。

だからこそ、以下のようなポイントを意識して設計することが大切です。

出品設計の工夫内容
✅ 一般販売とは明確に切り分けるサブスク限定・数量限定などの販売条件で差別化
✅ 訳あり理由をポジティブに伝える「賞味期限間近」「パッケージにキズあり」など、理由を誠実に説明
✅ セット販売で価値を高める単品よりも「レスキューBOX」などのセットで提案しやすく

こうした工夫は、値引き=安売りではなく、「納得して選んでもらえる価値ある提案」に変える力を持っています。実際、「ちょっと期限が近いだけなのに、すごくおいしかった!」「エシカルに買い物できてうれしい」といった声もたくさん届いています。


商品は、作ったその瞬間から「誰かのため」に生まれたものです。
たとえ今、少し時間が経ってしまっていても、その想いがちゃんと届く場所があれば、価値は決してなくなりません。

滞留在庫を“エシカルに価値変換”するという選択は、ただの在庫処理ではなく、社会や環境とやさしくつながる新しい循環のはじまりです。

「もったいない」を、「ありがとう」に。
そんな未来を、わたしたちの手で少しずつ育てていけたらうれしいです。

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